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東部市場前

過去から来た猿

書きかけの艦これSS、その2。
これで最後。

国家神道SS


国家神道は禁止! 禁止です!」
 白昼の鎮守府に甲高い男の声が響き渡る。
 廊下を駆けてゆく長身の影に誰もが振り返った。
 誰だ、あれは。
 否や、まさか。
 提督だ――――。
国家神道は禁止ったら禁止なんです!」
 その目は虚ろ、近代史の闇を湛えるように昏く、どこまでも見通すことができない。
 特定の誰かを捜すように視線を左右させる提督に、すれ違う艦娘は誰もが目を逸らす。
 と、ここにたまさか通りかかったのは金剛型巡洋戦艦二番艦・比叡。
「新しい紅茶の葉、買っちゃった。お姉さま、気に入ってくれるかな……」
 大きな期待と少しの不安に揺れる背中に、提督の血走った眼がぎょろりと向く。
「見つけた……。巫女服、見つけた……」
 提督は殺気をあらわにして比叡の背後へにじり寄っていくが、あろうことか、お姉さまとのお茶会のことで頭がいっぱいの比叡は気がつかない。
 とうとう真後ろに回ると、提督はその長い腕を伸ばす。
「――――ひ、ひえーっ!」
 巫女服姿の艦娘の悲鳴が辺りにこだました。



「被害報告はこれまでに三件。いずれのケースでも服を剥ぎ取られるだけで、ケガなどはないそうです」
 艦娘寮ミーティングルーム。集合した有志を前に、霧島が状況の報告を行う。
「だけ? だけとは何ですか。白昼堂々素っ裸にされる辱めを受けて『だけ』と言うのですか、あなたは!」
 言葉尻を捉えて食ってかかったのは山城。比叡に続く第二の被害者である。扶桑姉さま以外には見せたことなかったのに、とぐちぐち続けている。
「ごめんなさい、失言だったわ。でも身体を傷物にされたわけではないと聞いて安心してるの。信じてちょうだい」
 平謝りになる霧島だが、実はこの人こそ比叡・山城に続く第三の被害者(未遂)であった。というのは襲撃者の殺気を事前に察知し、すぐさま砲撃を加えて難を逃れたからである(現場の鎮守府庁舎は半壊した)。直後には全裸で気を失って倒れていた比叡を見つけて寮まで連れ帰った。その比叡は自室で寝込んでおり、今は雪風が付き添っている。
 扶桑にそっと抱き留められた山城が落ち着きを取り戻したのを横目で見ながら、霧島は話を進める。
「さて、当面の対策を話し合いましょう。まず艦娘ですが、すでに全員とも、この寮に収容済みです。なるべく大勢で部屋に集まって、建物の外には出ないよう周知しました。大型艦を中心に有志で見回りと捜索も行なっていますが、今のところ目標の発見には至っていません」
 国家の暴力装置の花形、一個体が対艦兵装たりうる艦娘が、たかがチカン相手にずいぶんと大袈裟な対応ではないか。そう思われる向きもあるだろう。だが翻ってみれば、それゆえの過剰反応とも言えた。歩く凶器、護国の要、であるがゆえに彼女らは性的欲望を突きつけられることに慣れていない――誰がそんな命知らずなことをするだろうか。ゆえに、ある意味では最大の弱点。


【中略】


「それで、あの男は何て言ってたのネー?」
 ここまで部屋の中心で黙って腕を組んでいた金剛が口を開く。けして「提督」とは呼ばないあたり、すでに見下げ果てたとみえて、その目は怒りに燃えていた。
「時間と場所をわきまえろって言ったノニ~! どうしてワタシのところには来てくれないデース! 許せナーイ!」
 怒りは怒りでも、他の娘とは少々焦点が違うようだった。
「金剛姉様は本命だから、きっと最後に残してあるんですよ……。それで、私は声を聞くまえに撃退したので知りませんが、比叡によると『コッカシントー』とか言ってた気がする、と。何でしょうね、『コッカシントー』って」
 山城も同じ声を聞いたらしく、こくこくと頷く。


【中略】


「まるで羅生門みたいね」扶桑が呟く。
「当事者の主張が矛盾してるところが、ですか?」
「あら山城、それは『藪の中』じゃなかったかしら」
「映画はそういう話なんですよ」


【中略】


「あー……陰陽道はOKとします」


【中略】


憲法にも政教分離って書いてあるでしょ!」